建設業の人手不足の現状と対策|データで見る実態と中小工務店の打ち手5つ

建設業の人手不足は、今どこまで来ているのか

建設業の人手不足の現状と対策|データで見る実態と中小工務店の打ち手5つ の要点

「求人を出しても応募が来ない」「現場を回す職人の平均年齢が毎年上がっていく」——建設業の人手不足は、もう景気の波ではなく構造の問題になっています。まずは感覚ではなく、公的統計で現在地を確かめておきましょう。

総務省の労働力調査によると、建設業の就業者数は1997年(平成9年)の約685万人をピークに減り続け、2024年(令和6年)平均では約477万人。ピーク時から約3割減った計算になります。そもそも母集団そのものが縮んでいる、というのが出発点です。

年齢構成はさらに厳しい状況です。国土交通省の国土交通白書によれば、2024年の建設業就業者に占める55歳以上の割合は36.7%、29歳以下は11.7%。全産業平均(55歳以上32.4%、29歳以下16.9%)と比べると、高齢層に厚く若年層が薄い形がはっきり出ています。つまり、これから数年で一定数が引退する一方、入ってくる人は全産業平均より少ない。放っておけば差は開く一方です。

採用市場の競争も激しい。厚生労働省の一般職業紹介状況(職業安定業務統計)では、建設躯体工事の職業の有効求人倍率は7倍台〜8倍台という水準で推移しており、全職業計の1倍台前半を大きく上回っています。求職者1人を、何社もの会社が取り合っている状態です。

整理すると、建設業の人手不足は「①働き手の母数が減っている」「②高齢化で退職予備軍が多い」「③少ない求職者を大量の求人が奪い合っている」という三重構造。中小工務店にとって、これは「うちの努力不足」ではなく「前提条件が変わった」という話です。だからこそ、打ち手も従来の延長線上ではなく組み替える必要があります。

なぜ人が集まらないのか。中小工務店に効いている4つの原因

原因1:労働時間と賃金のギャップ

前掲の国土交通白書では、建設業の年間実労働時間は2,018時間で他産業より62時間長く、年間賃金は432万円と全産業の508万円を下回ると示されています。求職者が求人サイトで横並び比較する時代に、この差はそのまま応募数に効きます。時間外労働の上限規制が建設業にも適用されて以降、現場の働き方をどう設計するかは採用と直結する経営テーマになりました。

原因2:そもそも「知られていない」

地元で20年やっている工務店でも、求職者側から見ると「聞いたことのない会社」であることは珍しくありません。求人票しか接点がないのに、その求人票が条件の羅列だけで終わっていると、判断材料がなく候補から外れます。人材確保ができないのではなく、比較の土俵に上がれていないケースが非常に多いのです。

原因3:入っても育たない、育つ前に辞める

技術が親方の頭の中にしかなく、教え方が人によってバラバラだと、新人は「自分が成長している実感」を持てません。人手不足の現場ほど教える時間が取れず、放置され、離職する。そしてまた採用コストがかかる、という悪循環に入ります。採用よりも先に、この漏れバケツを塞ぐほうが効率が良い場面は多くあります。

原因4:採用に手が回らない

社長が現場も見積もも営業も採用も兼務している。求人原稿を書き直す時間が取れず、去年のコピペを出し続ける。応募が来ても返信が3日後になる。中小工務店の人材確保が進まない最大のボトルネックは、意欲ではなく可処分時間であることがほとんどです。

中小工務店が今できる5つの打ち手

打ち手1:まず「辞めない理由」をつくる

1人の離職を防ぐことは、1人を採用することと同じ価値があります。しかも採用より確実です。入社1〜3年目と面談し、不満の中身を「時間」「金銭」「人間関係」「成長実感」の4分類で棚卸ししてください。多くの場合、一番効くのは大幅な昇給ではなく、休みの取りやすさや評価の透明性といった運用の改善です。まずは自社の離職理由を、推測ではなく本人の言葉で持つこと。ここが全ての起点になります。

打ち手2:求人票を「条件表」から「働く姿が浮かぶ文章」に変える

同じ待遇でも、書き方で応募数は変わります。1日の流れ、先輩社員の入社経緯、未経験からどう育つのか、繁忙期の実態まで書く。良いことだけ並べた求人票は入社後のギャップを生み、結局早期離職につながるので逆効果です。具体的な書き方は工務店の求人票の書き方を手順どおりになぞるところから始めると早いです。

打ち手3:入口を広げる(未経験・異業種・シニア・女性)

経験者だけを狙う限り、7倍を超える有効求人倍率の中で他社と真正面から競合します。未経験者や異業種からの転職者、体力負荷の低い工程を担うシニア、施工管理や事務での女性採用など、自社が受け入れられる入口を洗い出してください。ポイントは「誰でも歓迎」と書かないこと。受け入れ体制が整っている職種に絞って明示するほうが、結果的に応募の質は上がります。

打ち手4:職人の技術を見える化して、育成期間を縮める

未経験者を採るなら、育てる仕組みがセットで必要です。とはいえ立派なマニュアルを最初から作る必要はありません。頻度の高い作業から順に、スマホで手元を撮る、チェックリスト1枚にする、判断の理由を一言添える。この積み重ねが、教える側の負担を減らし、新人の定着率を上げます。着手の順序は技術承継の始め方にまとめた手順が参考になります。

打ち手5:事務・原稿づくりをAIと外部に逃がす

打ち手1〜4が進まない最大の理由は時間です。求人原稿の下書き、面接後の記録、日報の整理、施工事例の文章化といった「考えなくてもいいが時間は食う」作業は、AIに下書きさせて人は確認と修正だけ行う形に切り替えられます。求人まわりの具体例はAIで建設業の求人票を書き直す方法が実務に近いはずです。空いた時間を、面談と現場の改善に回してください。

進め方の手順:30日でやること、90日でやること

全部を同時に始めると必ず止まります。順番を固定しましょう。

1〜30日:①在籍社員へのヒアリング(1人30分×5人程度)、②離職理由と応募数・面接数・入社数の3年分を1枚に書き出す、③現行の求人票を打ち手2の観点で全面改稿し、写真を差し替える。ここまでで、自社の弱点が採用の入口にあるのか定着にあるのかが判別できます。

31〜90日:④入口を広げる職種を1つ決めて募集を出す、⑤受け入れ担当を1名決め、最初の3か月の教育チェックリストを作る、⑥応募〜返信までの時間を24時間以内にするルールを決める。返信速度は費用ゼロで改善できるうえ、歩留まりに直結します。

90日以降:技術の見える化と、事務作業のAI化を並行して回します。四半期ごとに応募数・面接率・入社数・6か月定着率の4指標を見直し、効いた施策だけ残す。これで人材確保が「その年の運」から「回る仕組み」に変わっていきます。

進めるときの注意点

第一に、求人票に事実と異なる好条件を書かないこと。労働条件の明示は法律上の義務であり、実態と乖離した記載はトラブルと早期離職の原因になります。「残業ほぼなし」と書くなら、実績値を答えられる状態にしておく。

第二に、施策を一度に増やしすぎないこと。中小工務店のリソースでは、同時進行は3つが限界です。効果測定ができなくなると、翌年の判断材料も残りません。

第三に、採用は短期で結果が出ないと理解しておくこと。求人票を直した翌週に応募が殺到することは、まずありません。応募数だけでなく「面接に進んだ率」「6か月後に在籍している率」まで記録し、半年〜1年単位で評価してください。

よくある質問

建設業の人手不足はいつまで続きますか?

短期で解消する見通しは立っていません。就業者の36.7%が55歳以上という年齢構成(国土交通白書)を踏まえると、今後も一定数の引退が続き、若年層の入職がそれを埋めきれない状態が当面続くと考えるのが現実的です。「待てば戻る」前提ではなく、少ない人数で回る体制づくりを前提に計画を立てるべき局面です。

小さな工務店でも人材確保はできますか?

できます。大手と同じ土俵で待遇を競うのではなく、意思決定の速さ、任される範囲の広さ、地域密着といった中小ならではの働き方を具体的に言語化することが有効です。実際、求人票の情報量を増やしただけで応募の質が変わるケースは少なくありません。まずは自社の「入って良かったと言われた点」を社員から集めることから始めてください。

採用にかける予算はどのくらいが目安ですか?

業界平均を追うより、自社の数字を出すほうが役に立ちます。直近3年の採用関連費用の合計を採用人数で割れば、1人あたりの採用単価が出ます。その金額と、1人が辞めたときに失う教育時間・外注費を比べてみてください。多くの工務店では、定着施策のほうが費用対効果で上回ります。予算配分はその比較の後で決めるのが順序として正しいです。

まとめ

建設業の人手不足は、就業者数の減少・高齢化・求人倍率の高止まりが重なった構造的な変化です。中小工務店に必要なのは、大手の真似ではなく順番の設計。まず離職を止め、求人票を書き直し、入口を広げ、育つ仕組みを作り、時間を生むためにAIと外部を使う。この5つを30日・90日で区切って進めれば、来期の採用は確実に今期より楽になります。今日できるのは、社員1人と30分話す約束を取ることです。

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監修:株式会社ウィズモー(工務店の事業促進・社内改善支援)

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