工務店の倒産は資金繰りで起きる|黒字倒産を防ぐ表の作り方
結論:工務店の倒産は「赤字」ではなく資金繰りで起きる
「小倉和の工務店支援チャンネル」の今回のテーマは、工務店のリアルな資金繰りです。受注はある、利益も出ている、それでも通帳の残高が増えない——そんな会社が実際にあります。動画の中で小倉は、建設業は入金までのリードタイムが非常に長く、受注してから完成までの間「ずっと血を流し続けているような状態」になると表現し、資金繰りは「自社が継続できるかどうかの命綱を握っている」と話しています。
動画で語られている結論は、技術論ではなくきわめてシンプルです。
- 決算書や試算表に出てくる売上・利益は「成績表」であって、現金の動きそのものではない
- いつ現金が出ていき、いつ入ってくるのかを把握しないまま受注を取ることが、工務店の倒産に最も近づく行為
- だから最初にやるべきは、ノウハウ探しではなく「資金繰り表を作ること」
動画の冒頭では、支援先の工務店に元気がない、集客も落ちて社員も採れない、ホームページを変えるお金もない——という最近の空気についても触れられています。そのうえで小倉は、資金繰りを理解せずに「集客だけ伸ばしてください」と言われるのは怖い、という言い方をしています。入口(受注)より先に、お金が残る構造の確認だという整理です。
なぜ受注があるのに現金が尽きるのか
動画で説明されている建設業の特殊性は、支払いと入金の順番が逆だという点です。今日家が売れたからといって、その場でお金が入るわけではありません。先に大工さんへの支払いや材料費が出ていき、その間も社員の人件費や家賃といった固定費は毎月出続けます。
小倉は、知り合いの社長の例として、売上も利益も伸びているのに、毎月のように社長の配偶者が通帳とにらめっこして「お金がない」と言い、支払いのために結局また銀行から借りる——という状態が語られています。利益が出ていることと、現金があることは別だという典型例です。
職人出身でそのまま会社が大きくなった社長ほど、この領域が手薄になりやすいという話も出てきます。動画では「キャッシュアウトするタイミングはいつで、そのために何をしていますか」と聞いても答えられない社長が多い、と指摘されています。
動画で語られた「5,000万円案件」で現金が消える流れ
動画内では、具体的な金額を挙げたシミュレーションが語られています。以下はすべて動画内で語られた数字です。
| 時期 | 起きること | 現金 |
|---|---|---|
| 1月 | 5,000万円の高額案件を受注 | 入金なし |
| 2月 | 前払いで1,500万円を支払い | ▲1,500万円 |
| 3月 | 材料費などの仕入れで約2,000万円 | ▲2,000万円 |
| 毎月 | 人件費・広告費・家賃などの固定費 | 継続して流出 |
| 7月 | この案件がようやく完成 | ここで初めて入金 |
動画では、この時点で通帳を見るとすでにマイナス、残高がない状態になっていると説明されます。そして「1月、2月、3月、4月、5月、6月をどう乗り切るのか」という問いが投げられます。受注できた喜びと、その6ヶ月を生き延びられるかどうかは、まったく別の問題だということです。小倉は、これが分かっていないなら、そもそもこういう受注の取り方はしない方がいいと話しています。
「小さい案件を数多く」も正解ではない
では大型案件を避け、小さい案件を回せばいいのか。動画では、それも少し違うと整理されています。建設業では100万円の受注でも1〜2ヶ月かかることがあり、金額の大小だけでキャッシュフローは決まりません。
ここでも動画内で語られた数字を使った説明があります。
| 項目 | 動画で語られた内容 |
|---|---|
| 受注額 | 2,000万円 |
| 粗利率 | 約30% |
| 粗利額 | 約600万円 |
| 完成までの期間 | 4ヶ月〜半年 |
| 月あたりの利益 | 約100万円 |
半年がかりで600万円の粗利なら、月に直せば約100万円。その会社が月に200万円使っていれば、案件が黒字でも会社は潰れる、というのが動画で示される結論です。大型でも中型でも、最終入金がいつか、月あたりの営業利益がいくらか、支払いのタイミングはいつか——この三点をそろえて初めて、受けていい案件かどうかが判断できるとされています。
先にお金をもらえない構造と、それでもできる工夫
「お客様に先払いしてもらえばいい」という素朴な解決策についても、動画では建設業の構造が説明されます。住宅ローンは建物が担保になるため、家が建っていない段階では金融機関が全額を出せません。土地だけの状態では、担保ができるまでの「つなぎ融資」という仕組みを使うことになり、工務店はそのつなぎ融資の中から着工金・中間金を受け取って支払いに充てていく。だから先に欲しくても、まとめて先にもらうことはできないという話です。
そのうえで、動画では現実的な工夫がいくつか挙げられています。
- 入金配分を見直す:着工金・中間金・上棟金・完成金の比率を「3・3・3・1」にしている会社もあれば「4・4・3」のような配分でやっている会社もあり、そこは各社の工夫の余地がある
- 固定費を下げる:人件費、家賃、リース、広告の運用手数料や各種月額手数料など、残高から毎月消えていくものを一つずつ見る
- 入金を早め、支払いを遅らせる:カードの支払日が15日か25日か翌月5日かでも資金は変わる、という水準まで細かく詰める
- 日々の記録:レシートをきちんと処理するといった地味な作業の積み上げが結局効く
小倉は、資金繰りは華やかなテクニックやノウハウではなく「泥臭くやるしかない」と話し、いつ入金されていつ支払うかという「命がけの戦争を毎月している」のが工務店だと表現しています。業者への支払いが翌月払いになりやすい理由(納品された証拠をもって翌月に払う)や、在庫を持ってから売る商売、受注してから入金を受けて作る商売に比べて住宅は構造的に不利だという比較にも触れられています。
明日からやること
動画の最後で「今まさに資金繰りで悩んでいる人は何から始めればいいか」と問われた小倉は、迷いなく「まず資金繰り表を作ること」と答えています。作っていないことが一番の課題だ、という整理です。
- 月次の資金繰り表を作る:いつ入金され、いつ自社が支払うのかのサイクルを一枚にする。まずは簡単なもので構わない
- 固定費を書き出す:人件費・家賃・リース・各種月額手数料まで、毎月確実に出ていくものを漏らさず並べる
- キャッシュアウトのポイントを特定する:どのくらいの受注額が来ると現金が足りなくなるのかが見えるようにする
- 毎週更新する:未来のキャッシュフローが常に見える状態を保つ
- 先回りして銀行に相談する:資金が尽きる地点が分かったら、その表を持って融資を依頼する
動画では、資金繰り表のチェックリストやテンプレートを使って、まずは自社で作ってみるとよいという案内もされています。
よくある質問
Q. 資金繰り表は何を書けばいいのですか?
動画で語られているのは、入金の時期と金額、支払いの時期と金額、そして毎月の固定費です。固定費を引いた後の預金残高が、自社が先払いできる余力になります。受注額が大きくなるほど先払いも大きくなるため、この余力とのバランスが崩れたときに黒字倒産が起きる、という説明になっています。
Q. 受注が取れているのに銀行へ融資を依頼するのは、印象が悪くありませんか?
動画では逆だと語られています。銀行からすれば受注が取れているからこそ融資ができる、という見方で、受注に合わせて資金を手当てするのは普通に起こり得ることだと説明されています。だからこそ、キャッシュアウトのポイントを示せる資料を先に持っていくことに意味があります。
Q. 支払いを翌月に回しても、翌月はまた次の請求が来るだけでは?
これは動画内でも聞き手から出た疑問ですが、小倉は「意外と違う」と答えています。いつ入金され、いつ支払うかのサイクルを数日単位でずらしていくこと自体が、毎月の残高を守る実務だという立場です。あわせて、建設業は1%の利益率の違いでも状況が大きく変わるという話にも触れられています。
まとめ
受注は成果ですが、現金は命綱です。動画が伝えているのは、売上と利益という成績表だけを見ていると、お金の流れを見る習慣が育たないまま会社が危うくなるということ。入金リードタイムが長く、材料費が上がり、客数も減っている環境でも、地域工務店が足腰を強くして生き残るための第一歩は、立派な経営改革ではなく一枚の資金繰り表だ、という話に落ち着きます。
続きや実際のやり取りは動画でご覧ください: YouTubeで動画を見る
なお、資金繰り表の集計や毎週の更新といった手が回らない事務作業については、工務店×AIの実務を、AI業務代行『マルオくんAI』(株式会社ウィズモー提携)に丸投げできます。
監修:株式会社ウィズモー(工務店の事業促進・社内改善支援)
