工務店経営で年商10億|新築を伸ばさない多角化戦略とは
結論:工務店経営で年商10億を超える鍵は「新築を伸ばさない」
年商1億の壁、3億の壁、そして10億の壁。地域工務店・住宅会社の経営者であれば、どこかで必ずぶつかるラインです。今回の動画「【倒産しない建設業】10億工務店の作り方」では、すでに年商12億8000万円に到達している千葉県の地域ビルダーの経営者をゲストに迎え、小倉がその突破プロセスを掘り下げています。
動画の冒頭、小倉が「10億はどうやったら目指せますか」と単刀直入に聞いたところ、返ってきたのは次の一言でした。
「結論で言うと、工務店は新築をあまりやらない」
新築事業の支援を本業にしている小倉自身が「これは衝撃の事実」と反応するほどの逆張りです。動画で語られた要点を先に3つ挙げます。
- 新築は「やめない」が「伸ばさない」。売上の主役の座から降ろす
- 建築という領域の中で事業を複数に分ける。顧客ではなく事業単位で分散させる
- いちばん競合が少ないのは店舗内装。工務店の技術と人員がそのまま転用できる
つまり10億工務店とは、1本の柱を太くした会社ではなく、暮らしと建築まわりの依頼を丸ごと受けられる「受け皿」を設計した会社だという整理です。
なぜ新築一本の工務店経営は10億の壁で止まるのか
ゲストの経営者は16歳で大工を始め、25歳で個人事業主として独立、26歳で法人化して現在12年目。新築事業に本格参入したのは2年前だと語られています。つまり「新築を伸ばさない」は机上論ではなく、自分で立ち上げてみた上での判断だという点が重要です。
動画では、新築事業が経営を重くする理由が4つ挙げられていました。
| 重さの正体 | 動画で語られた内容 |
|---|---|
| 認知コスト | 立ち上げてから地域に認知されるまで、とてつもない時間と費用がかかる |
| 利益率 | 「とてつもなく良いわけでもない」。手間に対する見返りが読みにくい |
| リードタイム | 出会いから竣工・入金まで1年近く |
| キャッシュフロー | 入金が遠いぶん資金繰りが悪化し、経営がしんどくなる |
さらに決定打になったのがコロナ禍の経験です。それまで何倍にも伸びていた売上が、一気に半分ほどまで落ちたと語られています。このとき「依存はまずい」という実感が生まれ、顧客の分散だけでなく事業そのものを分散させる方向に舵を切ったという流れです。
では、なぜ新築を完全にやめないのか。理由として挙げられていたのは、売上ではなくブランディングでした。千葉県はローコスト住宅を手がけるメーカーが多く、品質面で気になる住宅も少なくない。だからこそ品質管理を徹底した家を供給することが、生まれ育った地域への恩返しと自社の認知につながる、という考え方です。かつては月20棟規模を回していた時期もあったものの、現在は月1棟・年間12棟にコミットし、意図的に着工制限をかけて「行列のできる工務店」を目指していると話しています。
動画で語られた「10億の受け皿」をつくる4ステップ
多角化と聞くと響きは良いものの、何から手をつけるかが分かりません。動画のやり取りを順番に整理すると、次の4ステップになります。
- 自社の強みから深掘りする事業を1つ決める
この会社の場合は店舗内装でした。大工時代に「店舗の吊り棚を作ってほしい」「造作家具を作ってほしい」というオファーが自然に来ていたため、知見のある領域として深掘りできたと語られています。ゼロから流行りの事業に飛び込むのではなく、すでに声がかかっている領域を選ぶのが起点です。 - 立ち上げには社長自身が先頭で入る
「各事業に事業責任者がいないと動かないのでは」という小倉の問いに対し、10億規模の会社であれば社長が頭に立って推進するのが大事だという回答でした。人を採ってから始めるのではなく、社長が立ち上げだけはやり切る、という順番です。 - 10億を事業別の数字に割る
動画で例として示された組み立て方は次のとおりです。
| 事業 | 想定する規模(動画内で挙げられた例) |
|---|---|
| 得意分野(例:店舗内装) | 4億円 |
| 新築 | 1〜2億円 |
| アパート | 1〜2億円 |
| 外構・ガーデン | 1〜2億円 |
| リフォーム | 1〜2億円 |
1本で10億を狙うのではなく、得意分野を4億まで伸ばし、残りを1〜2億ずつの事業で埋めていく。これなら「10億」が急に現実的な数字に見えてきます。
- 事業ごとに屋号を立てて発信する
この会社では内装、新築、ガーデン、アパートでそれぞれ別の屋号を持ち、事業単位でブランディングと発信を行っていると語られています。社名ひとつで何でもやる会社ではなく、「あの分野の会社」として地域に記憶されるための設計です。
目指しているゴールは明快で、地域で建築や内装のことを思い出されたとき、最初に名前が出る存在になること。新築で出会ったお客様が10年後にリフォームを考える、庭を作り替えたくなる、勤務先の店舗内装を頼みたくなる——これまで点だった事業が線でつながり、顧客リストが資産に変わる構造です。
いま競合が薄いのは「店舗内装」というブルーオーシャン
動画の中盤以降、話題は「で、いま何が熱いのか」に移ります。ここで語られたのが店舗内装でした。
理由は市場規模ではなく、competitorが表に出ていないことです。内装業は下請けで動く会社が多く、元請けとして顔を出している会社がほとんどない。SNSをやっていない、ホームページが何年も更新されていない、YouTubeに出ていない——そういう状態が当たり前だと語られています。
実際にこの会社は2024年2月からYouTubeでの発信を本格的に始め、動画収録時点(2024年5月)までの約3か月で、問い合わせから受注まで到達したと話しています。小倉も「YouTubeをやっている内装会社は見たことがない」と同意していました。
経営面のメリットとして強調されていたのは、やはりリードタイムです。
| 案件 | 入金までの目安(動画内で語られた期間) |
|---|---|
| 小規模な内装工事 | 早いものは数週間 |
| 通常の店舗内装 | 1か月程度 |
| 大型の店舗内装 | 2〜3か月 |
| 新築 | 1年近く |
受注金額と利益率もそれなりに良く、短期で現金が戻ってくるため「経営的にすごく楽」という表現が使われていました。一方で新築市場は「誰がどう見ても落ちる」、中古リノベーションは需要はあるがレッドオーシャン、という見立てです。だからこそ競合不在の店舗内装を勧める、という主張の筋が通っています。
なお動画内では、内装業を立ち上げたい同業者向けのコンサルティングや、施工事例・集客用LP・YouTubeを使えるフランチャイズの募集(収録時点では関東限定)についても案内がありました。詳細は動画の概要欄で案内されています。
明日からやること
動画のタイトルにある「明日から〇〇をやれ」を、記事として実行可能な形に落とすと次の5つです。
- 売上を事業別に分解して紙に書く。新築への依存度が何%か、まず数字で直視する
- 過去3年の「断った問い合わせ」を洗い出す。店舗の造作、什器、小規模内装など、すでに声がかかっている領域が深掘り候補になる
- 10億(または目標額)を事業別に割り振る。得意分野4億+他事業1〜2億ずつの型をあてはめてみる
- 深掘りする1事業に屋号と専用の発信窓口を用意する。会社名ではなく事業名で検索される状態をつくる
- 社長自身が立ち上げの3か月を押さえる。責任者が育つのを待たず、最初の受注までは自分で取りに行く
逆に、やらない判断も明確にしておくことが大事です。新築の棟数を増やす、知見のない異業種に手を出す——このふたつは動画の主張とは真逆の方向になります。
よくある質問
社員が少ない会社でも多角化できますか
動画では「社員が少なくても絶対にやった方がいい」と語られています。参考までに、この会社は年商12億8000万円に対してパート・アルバイトを含めて約20名(営業3名、職人6名、設計4名、総務経理4名、広報・マーケティング1名、アルバイト2名)で、年間500件程度の施工に携わる体制だと説明されていました。人数が増えてから多角化するのではなく、コロナのような事態で柱が1本折れた瞬間に全部が崩れることを避けるために、今から種をまくという考え方です。
新築はやめた方がいいのでしょうか
やめる話ではありません。動画の主張は「売上を伸ばす主役にしない」です。新築は地域ブランディングと顧客リスト獲得の役割を担わせ、棟数を絞ることで品質を上げる。結果としてお客様のためにもなり、良いものを提供できる、という整理でした。
店舗内装は専門知識が必要で、いきなり始めるのは難しくないですか
小倉も同じ懸念をぶつけていました。これに対しては、支援を受けながら立ち上げた知り合いの事例や、図面を共有してチェックする形でのサポートを個人的に行っているという話が紹介されています。フランチャイズの枠組みであれば、最初から施工事例がある状態でスタートできる点が魅力だとも語られていました。ハードルの高さそのものは認めた上で、入り方を工夫する、という回答です。
まとめ
今回の動画で示された10億工務店の作り方は、次の4点に集約されます。
- 建築・暮らしまわりをトータルで受けられる受け皿をつくる
- 事業ごとに屋号を分け、事業単位でブランディングする
- 立ち上げは社長がコミットし、10億を事業別の数字に割る
- 深掘り先はブルーオーシャンの店舗内装。短いリードタイムでキャッシュを回す
新築の受注棟数を追いかけることが、必ずしも工務店経営の成長曲線とは一致しない。この違和感を言語化してくれる回でした。自社の売上構成を一度分解してみるだけでも、次の一手の見え方が変わるはずです。
続きや実際のやり取りは動画でご覧ください: YouTubeで動画を見る
なお、多角化に伴って増える見積作成や問い合わせ対応、事業別の発信といった手が足りない業務については、工務店×AIの実務は、AI業務代行『マルオくんAI』(株式会社ウィズモー提携)に丸投げできます。
監修:株式会社ウィズモー(工務店の事業促進・社内改善支援)
