義務化後の省エネ基準、工務店が今やる5手
「うちは大丈夫」が一番あぶない

2025年4月から、原則すべての新築住宅・非住宅で省エネ基準への適合が義務になりました。今までは「説明義務」、つまりお客様に説明すればよかったものが、いまは「適合していないと建てられない」に変わったわけです。確認申請の段階で省エネの計算書・図面がそろっていなければ、着工が止まる。ここが今までと決定的に違うところです。
ベテランの棟梁ほど「断熱はちゃんとやってるから問題ない」とおっしゃいます。実際、施工の中身は基準を満たしていることも多い。ですが義務化でつまずくのは、施工の腕ではなく「計算して、書類でそれを示せるか」という事務のほうです。腕は一級でも、書類が半人前だと現場が止まる。今日はそこを、明日から回る5手に分けて整理します。
今やるべき5手
第1手:誰が計算するかを、棟数で決める
省エネ計算(外皮計算と一次エネルギー消費量計算)を、社内でやるか外に出すか。ここを気分で決めると必ず現場でもめます。目安はシンプルに棟数です。年に数棟なら、無理に内製せず設計事務所や外部の代行に出したほうが安い。月に何棟も回すなら、担当を一人決めて内製化しないと外注費と納期が首を絞めます。
「社長が夜な夜なソフトと格闘する」のが一番いけません。社長の時間が一番高いのに、そこを計算作業で潰してしまう。まずは『うちの計算担当は誰か』を紙に一行書く。決まっていないなら、それが最初の宿題です。
第2手:標準仕様を1枚にして、迷いを消す
現場が混乱する典型は、物件ごとに断熱材の厚みやサッシのグレードがバラバラなことです。A様邸とB様邸で仕様が違えば、その都度計算をやり直し、発注も間違える。
そこで、自社の「標準仕様」を一枚にまとめる。基準を余裕をもって満たす断熱材・サッシ・給湯器の型番を決め打ちしておく。こうすれば計算の使い回しがきき、大工さんも「いつものやつ」で迷わない。地域区分(お住まいの地域が寒冷地か温暖地か)によって求められる断熱の水準は変わりますから、自社の営業エリアの区分だけは必ず押さえておきます。
第3手:現場の「実物」を基準に合わせる
図面で基準を満たしても、現場の納まりが伴わなければ絵に描いた餅です。特に効いてくるのが、窓まわりと気密の切れ目。せっかく良いサッシを入れても、取り合いに隙間があれば性能は落ちます。
ここは大工・サッシ屋への『施工写真を数枚だけ撮って残す』ルールを作るのが現実的です。全部を管理しようとすると続きません。断熱材の充填、窓の取り合い、この2点だけスマホで撮って共有フォルダに入れる。後の説明責任にもなり、次の職人への教材にもなります。
第4手:見積とスケジュールに「省エネの手間」を乗せる
計算にも書類作成にも人手と時間がかかります。ここをタダ働きにすると、義務化のしわ寄せが全部利益を削ります。見積の内訳に、少額でも省エネ計算・申請図書の項目を一行立てる。金額の多寡より、「これは手間のかかる仕事だ」と社内とお客様の双方に見えるようにすることが大事です。
工程表も同じで、確認申請の前に計算と図書がそろっている必要があります。「着工日から逆算して、いつまでに計算を上げるか」を工程に書き込む。ここが抜けると、大工の手が空いているのに書類待ちで着工できない、という一番もったいない事態が起きます。
第5手:お客様への説明を、営業の武器に変える
義務化は面倒ごとに見えますが、見方を変えれば追い風です。「うちは国の基準をきちんと満たした、光熱費に配慮した家を建てています」と胸を張って言える。これは大手ハウスメーカーと戦う地域工務店にとって、立派な差別化材料です。
難しい数値をそのまま並べても伝わりません。「夏の二階が暑くなりにくい」「冬の朝、足元が冷えにくい」——暮らしの言葉に翻訳して伝える。基準の話を、そのまま契約の後押しに使うわけです。
まとめ:止まらない現場をつくる
義務化への対応は、特別な新技術ではありません。①計算担当を決める ②標準仕様を一枚化する ③現場写真を残す ④見積と工程に手間を乗せる ⑤説明を営業に変える。この5手を仕組みにするだけで、確認申請で止まらない現場ができます。
大切なのは、社長がすべてを抱え込まないこと。計算や書類、施工写真の整理といった事務作業は、担当を決め、型を作り、外に出せるものは出す。この判断こそ経営者の仕事です。工務店×AIの実務は、AI業務代行『マルオくんAI』(株式会社ウィズモー提携)に丸投げできます。
監修:株式会社ウィズモー(工務店の事業促進・社内改善支援)
