「売上10億」を語らなくなった社長へ|工務店経営と目標の再設計

結論:工務店経営で目標を語れなくなったのは、赤字の記憶が蓋をしているから

「昔は売上10億、給料を倍にしよう、と言っていた。でも最近は言わなくなった」。今回の動画で、東京・杉並区で店舗内装の設計デザインと工事を手がける78WORKS株式会社の小島社長が漏らしたこの一言に、小倉が正面から切り込みます。

目標を語らなくなった理由は、夢を諦めたからではありませんでした。動画の中で語られたのは、売上を追って「何でもかんでも受けた」結果、生産性が落ちて赤字になった時期があったということ。そこから「売上じゃないんだ」という学びを得た代わりに、数字の目標そのものを口に出さなくなっていた——小倉はこれを「失敗体験が蓋をしている」と表現します。

そして小倉が投げたのが、こんな問いです。「もし生産性が高くて、ちゃんと仕組みがあって黒字になるなら、5億でも10億でも目指せますと言えるとしたら、目指したいんじゃないですか」。返ってきた答えは「目指したいですね」でした。この記事では、動画で交わされたやり取りを、地域工務店・住宅会社の経営者が自社に持ち帰れる形に整理します。

訪問先は「カフェの奥にある工務店」──78WORKSの事業構造

今回の舞台は、東京・阿佐ヶ谷。小倉がSNSの相談を受けて訪ねたのは、路面のカフェでした。ビビッドな内装のカフェの奥が事務所という構造で、2025年7月からオフィスの入り口としてカフェを始めたと語られています。打ち合わせに来た人に写真を撮ってもらいたい、という意図も込められた空間です。

動画内で語られた会社の数字を整理すると、次のようになります。

項目 動画内で語られた内容
事業内容 店舗の内装工事と設計デザイン(新築・リフォームは非対応)
社員数 5名(現場監督・設計)
年間施工件数 30件弱
工事単価 300万〜1000万が中心、平均は1500万ほど、小さいものは100万台も
年商 ならして2億ほど
主な業態 飲食、特にカフェとバー
集客経路 紹介・リピートが大半(紹介は月10件弱)+Web経由の問い合わせ
月間問い合わせ 15件前後、そのうち受注は3件ほど

特筆すべきは「カフェで1500万」という単価です。動画では、人が採用できないという悩みを持つ店舗オーナーが、自動釣銭機やレジ周りの省人化動線に最初から投資するため初期費用が上がる、と説明されています。小島社長の姿勢は「安く済ませる」ではなく「削っていい費用まで削るのはやめましょうね」。肩書きは「ファン作りプロデューサー」、会社のミッションは「幸せが集まるお店作り」で、長く続いて残るお店を作ることを掲げていると語られています。

相談内容は「SNSで何を発信すればいいか分からない」

小島社長が持ち込んだ悩みは、SNSと集客でした。いま自社は「内装工事ができますよ」という立ち位置に見えていて、相見積もりやスピード感で比較される。「いかに早く安くできますか」という依頼が多い、と語られています。

月15件の問い合わせのうち12件が受注に至らない理由も、動画で挙げられていました。

  • 「来週から」など着工時期が合わない
  • 他社の見積もりを持ち込んだ価格比較で、単純に他社が安い
  • テナントが借りられなかった
  • ちょっとした修理相談で金額が合わない

一方で、SNSで伸びている内装会社を見ると施工事例が美しかったりルームツアーをやっていたりする。自社は何を発信すべきか分からない——ここで小倉が確認したのは「SNSを伸ばしたい目的は何か」でした。

小島社長の答えは「件数を増やしたいというより、78WORKSさんにお願いしたいという人に問い合わせてほしい」。小倉はそれを「15件の中身を変えたい、つまりSNSは営業コンテンツとして世界観を伝え、結果的に成約率を上げる装置」と言語化します。同じ「SNSをやりたい」でも、母数を増やすのか客質を変えるのかで打ち手は正反対になる、という整理です。

発信軸は「うちはこうです」ではなく「みんなが知りたいこと+うちの場合は」

ここで小倉が示した発信の型が、記事として最も持ち帰りやすい部分です。

「うちはこうなんですという動画は、あまり見たくない」と小倉は話します。まず視聴者が知りたいことを発信し、その中で「うちの場合は」を差し込む。ハウツー系はどこもやっているが、同じテーマをやり続けるうちに、その人の味や世界観、こだわりは必ず出る。それが積み重なって高単価の受注につながる——という考え方です。

動画では、支援先である千葉の内装工事会社の例が紹介されていました。高単価でこだわりの店舗内装を取ることを目標にしている会社ですが、始まりは「内装工事で気をつけるべきポイント」「機器の選び方」といった、誰もがやりそうな内容だったと語られています。動画内で語られた数字は次のとおりです。

項目 動画内で語られた内容
取り組み期間 2年ほど
チャンネル登録者 2600人ほど(バズってはいない)
YouTube経由の問い合わせ 月40件超、全国から来て捌ききれず断ることもある
立ち上がり 最初の3か月〜半年は再生数が伸びず「意味あるのか」と感じるほど

登録者2600人で問い合わせが月40件を超える、というのが示唆的です。規模より、社長の世界観とこだわりをひたすら出し続けたことが効いていると語られています。

では小島社長は何を撮るべきか。小倉が掘ったのは「一番熱量が高くなる瞬間はどこか」という問いでした。返ってきたのは、仕上がりのミリ単位よりも、女性目線での動線づくりやスタッフが楽に動ける設計、リピートが生まれるインテリア——プランニングの段階だという答え。ならばそこを撮るべきだ、という結論になります。

  • 現場での設計担当との打ち合わせの様子
  • 納まりをどう決めたかを見せる現場チェック
  • 1件の現場に必ずあるストーリー(なぜこのプランになったのか、どんな施主だったのか)

小倉はこれを「プロセスエコノミー」「ストーリーテリング」と呼び、完成形ではなく過程に価値があると説明します。「今はまだこういう存在だが、最終的にここを目指している」と言い切ればギャップが生まれる、という考え方です。

「専門家ぶらない」──壁を作らない発信が客質を変える

小島社長がSNSを踏み出せなかった本当の理由も、対話の中で出てきました。「すごい専門家みたいに、めちゃくちゃできる人ぶらなきゃいけないんじゃないかという怖さがあった」。

これに対する小倉の答えは明快でした。動画では、小倉自身が10年職人をやっていたことを公表しているにもかかわらず「下手くそ」とコメントで書かれると明かしつつ、そういう方がコメントも増えて距離が近づく、と話しています。専門性が高くてすごい人という像を作ると壁ができる、むしろ隙がある方がいい、というスタンスです。

根拠として、小倉が数年前に150万円を投じて入会したマーケティング講座で学んだ考え方が紹介されています。専門家ぶる必要はなく、視聴者像に対して「自分がちょっとだけ先輩」であればいい。離れすぎると「自分にはできない」と思われてしまう。上を見ればすごい人はいくらでもいるなかで選ばれる理由は、同じ目線で話してくれそうだから——という説明です。

店舗内装なら「世界一の店を作ろう」ではなく「地域に愛されて長年続けられるとはこういうことです」を発信し続けるだけでいい。何十件、何百件の店舗を見てきたプロは、店舗を作ったことがない人から見れば十分に先輩だ、と語られています。

失敗の見せ方についても踏み込んだやり取りがありました。「ここは失敗した、これから直します」という動画も出していい。失敗が一つもない動画のほうがむしろ怪しく見える、さらけ出している方が誠実な会社だと伝わる、という指摘です。さらに期待値の設計として、こんな話も出ています。理念や思いに惹かれて依頼した施主は、像が崩れた瞬間にクレームになりやすい。最初に上げすぎず、実際に仕事をして「思っていた以上にできるじゃん」となる方が、仕事はやりやすい——という考え方です。

SNSは手段。先に描くべきは「船の行き先」

話は経営に移ります。2〜3年後どうなりたいかという問いに、小島社長が挙げたのは「この会社で働きたいと思われる社員満足度」と「78WORKSにお願いしたいというお客様が増えること」でした。

小倉が指摘したのは、そこに数字がないことです。「社員からしても、乗っている船がどこに向かっているのか知りたい」。社長のことが好きで一緒にいる社員に「どこを目指しているんですか」と聞かれたとき、みんなで登る一つの山があるといい——この投げかけから、冒頭の「最近それを言っていない」という告白が出てきます。

小倉が支援先で必ず作ると話しているのが、中期経営計画です。動画で語られた作り方は次のとおりです。

やること 動画で語られた中身
目標額を置く 50億でも5億でも何でもいい。まず絵を描くことが大事
中身を分解する その時の顧客の属性、単価、社内体制までスプレッドシートで細かく作る
理由を言語化する 「なぜこれを目指したいのか」を聞きながらラリーして一緒に作る
使う 社員に発表する、銀行融資にも使う

小島社長からは、販売の形態を変えたいという構想も出ていました。工事をたくさん受けて売上を上げるのではなく、施工は年間10〜20件程度に抑え、コンセプト作りの領域を増やしたい、という方向です。これに対し小倉は、片方をやるから片方をやらないという切り替えは難しいので、比率を1対9から2対8、3対7へと徐々に寄せていく方が現実的だと応じています。

そして締めに置かれたのが、SNSの位置づけです。SNSは手段であり、炎上リスクもあれば悪評が広がる可能性もある。それでもやるのは、自社を知ってほしい、人の夢を叶えたいという思いがあるから。だからまず絵を描き、SNSはやり方の話として後から乗せる——この順番が、この動画全体の背骨になっています。

明日からやること

  1. 目標を語らなくなった理由を書き出す。赤字や失敗の経験が蓋になっていないか。「体制が整っていれば目指したいか」と自問する
  2. 目標額を仮でいいので置き、中身を分解する。顧客属性・単価・件数・社内体制・粗利まで一枚に落とす。金額の大小より、絵があるかどうかが先
  3. SNSの目的を「母数」か「客質」かで決める。問い合わせ件数を増やすのか、同じ件数の中身を変えるのか。ここで打ち手が変わる
  4. 自分が一番熱くなる工程を特定し、そこを撮る。仕上がりか、プランニングか、施主との対話か。熱量の出る場所が自社の色になる
  5. 「みんなが知りたいこと+うちの場合は」で1本目を作る。専門家ぶらず、視聴者より少し先輩の立ち位置で話す
  6. 失敗やプロセスも出す。完璧な像は壁を作り、期待値を上げすぎるとクレームの芽になる
  7. 作った計画を社員に発表する。船の行き先が見えると、指針がぶれない

まとめ

この動画は「SNSの相談」から始まって、最後は中期経営計画の話で終わります。それは遠回りではなく、SNSが手段だからです。どんな会社になりたいのかという絵がなければ、何を発信すべきかも決まらない。

小島社長は最後に「バラバラしていたものに軸が入って、まず目標を立てるんだという忘れていたところを思い出しました」と振り返っています。小倉も「社長は他の社長と接する機会は多いのに、意外と本音が言えない。壁打ちして考えを整理する時間が指針をぶれさせない」とまとめています。売上を追って失敗した経験がある経営者こそ、もう一度数字を口に出してみる価値がある、という一本でした。

続きや実際のやり取りは動画でご覧ください: YouTubeで動画を見る

よくある質問

売上目標を掲げると、また何でも受けて赤字になりませんか?

動画で語られていたのは、目標額だけを掲げたことが問題だったという整理です。当時は売上をとにかく追って何でも受け、生産性が落ちて赤字になった。だから小倉が勧めているのは、金額だけでなく顧客属性・単価・件数・社内体制まで同時に分解すること。「この体制でこのくらい利益を出す」まで落ちていれば、案件を選ぶ基準も同時に決まります。

SNSのフォロワーが少ないままでも、問い合わせは増えますか?

動画で紹介された千葉の支援先は、チャンネル登録者2600人ほどでYouTube経由の問い合わせが月40件を超えていると語られています。バズっているわけではなく、社長の世界観とこだわりを出し続けた結果だという説明です。ただし立ち上がりは3か月〜半年ほど数字が動かなかったとも話されており、短期で判断しないことが前提になります。

発信するほどのノウハウがない気がします。何から話せばいいですか?

動画では「専門家ぶる必要はない、視聴者よりちょっとだけ先輩であればいい」という考え方が示されています。何十件の現場を見てきたなら、まだ一度も建てたり作ったりしていない人にとっては十分な先輩です。まずは施主が知りたい基本を話し、その中に自社の判断基準を混ぜていくところから始められます。

なお、発信の企画づくりや計画資料の整理まで手が回らないという工務店様は、工務店×AIの実務を、AI業務代行『マルオくんAI』(株式会社ウィズモー提携)に丸投げできます。

監修:株式会社ウィズモー(工務店の事業促進・社内改善支援)

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