退職ゼロの工務店経営|社員が辞めない20の仕組み

結論:工務店経営で最も金を食うのは「採用」ではなく「退職」

「小倉和の工務店支援チャンネル」の今回のテーマは、社員の定着です。動画の冒頭で小倉は、全国の工務店・住宅会社をコンサルティングするなかで「人材の定着で苦戦している社長がすごく多い」と感じている、と語っています。

結論から先に言えば、動画の主張はこうです。定着しない会社は、採用コストが永久に減らない。採用会社や媒体を使えば想定年収の3割程度のコストがかかる(動画内で語られた数字)にもかかわらず、入社後の育成や環境づくりには金をかけず「背中を見て覚えてね」で済ませている会社が多い。だから辞める、また採用する、またコストがかかる——このループから抜け出せないまま、何百万、何千万と溶けていく。

動画では、この悪循環を断つための施策が20個、具体的に挙げられています。小倉は「この中でやっていないことがあると思う社長は、1つずつ取り入れて明日からやってほしい」と繰り返し話しています。本記事では、その20項目を5つの切り口に整理してお伝えします。

背景:同じ業種なのに「目がキラキラした会社」と「事務所が暗い会社」がある

動画で小倉が挙げている、よくある相談内容は次のようなものです。

  • 人を採用しても、半年〜1年と経たずに辞めてしまう
  • 優秀なプレイヤーだったのに、社長と合わずに他社へ移ってしまった
  • 社員はいるが、事務所の雰囲気が暗く、モチベーションが低い
  • 飲み会で社員が会社の愚痴を言っている

一方で、訪問すると社員の目がキラキラしていて「この会社で働けて楽しい」「ここで活躍したい」と話す会社もある。小倉はこの差を「天と地ほど違う」と表現し、その違いを言語化したものが今回の20項目だと説明しています。なお動画内では、コンサルティング先の工務店に限ってトライアル導入してもらったところ、離職率と社員満足度の改善が見られたとも語られています(動画内で語られた内容であり、成果を保証するものではありません)。

①お金と評価を「鉛筆なめなめ」から卒業する

20項目の1つ目に置かれているのが、給与のシンプルな透明化です。動画では「工務店の給与設定は未だに鉛筆なめなめなことが多くないですか」という問いかけから始まります。今年はあいつが頑張ったからボーナスを増やす、あの子はダメだったから減らす——この不透明さが、モチベーション低下の直接の原因だという指摘です。

小倉が挙げる設計のポイントは、評価軸を職種ごとに言語化すること。

職種 動画で挙げられた評価軸の例
営業 受注棟数、受注時の粗利益額、利益額に対する分配率
現場監督 目標リードタイムの遵守、設定利益額のキープ、手戻りの発生回数
広報・マーケティング PR、反響からの相談化率、相談獲得単価
総務・経理 入金漏れをゼロにする、何人でどの売上規模まで回せるか

重要なのは、結果を見る「ジョブ型」と行動を見る「プロセス型」のバランスだと語られています。ジョブ型だけだとプロセスを考えない社員が生まれ、プロセス型だけだと頑張るが結果が出ない。そしてインセンティブの原資は会社の利益なので、利益に応じた配分設計が前提になります(18番目の「パフォーマンスに応じたインセンティブ導入」もこの延長にあります)。

加えて5番目に挙がるのが福利厚生の工夫です。通勤手当・住居手当はもちろん、動画では「地域のサウナと提携して行き放題」「ジムに通える」「子育て手当」といったユニークな発想例が紹介されています。6番目の「休日を増やすのではなく、休み方の自由を認める」も同じ発想で、休日数そのものより、月間でこれだけは休んでくださいという権利を渡し、使い方を社員に委ねるほうが満足度につながると説明されています。

②「最近どう?」は1on1ではない——対話と成長の見える化

2番目の施策が定期的な1on1ですが、動画ではっきり否定されているのが「最近どう?と聞くこと」です。1on1には目的がある、と小倉は言います。

  • その期間で社員が達成しようとしている目標に対し、進捗はどうか
  • その達成を妨げている悩み・課題は何か
  • チームワークやコミュニティ上の問題が起きていないか

つまり聞くことは事前に決まっている。さらに、聞いた人だけが分かっていても意味がないので、その日のうちに情報を共有し、翌日から打ち手を打つ。この流れまでをセットで設計するのが1on1だという整理です。

3番目はキャリアプランの提示。「まさか3年後に現場が見れるようになるよ、なんて言っていないですよね」という一節が印象的です。会社が3年後にこうなっている、そのときあなたにはこのポジションを任せたい、だから2年後はこう、1年後はこう、今はこう——この順序で語れているかが問われます。あわせて、現場監督からマネージャー・マーケター・人事へ、あるいは出産後にバックオフィスで支える道もある、といった複線のキャリアを示せているかも論点として挙げられています。

4番目の「小さな成功を評価する」は、朝礼で「昨日より5分早く終わらせます」「話したことのない人に話しかけてみます」と宣言させ、終業時に結果を聞いて褒める、という具体例で説明されています。10番目の「成長の見える化」はその仕組み版で、初回面談ができる・2回目面談ができる・契約の案内ができる・土地の案内ができる、設計なら矩計図が書けるようになった——といったスキルのチェックリストが会社にあるか、という問いです。これがないから評価しづらく、社員も自分の成長を感じられないと語られています。

③社長と社員の「2層構造」をやめる——組織と配置の設計

9番目の施策が、リーダー育成です。動画で「1番ダメ」と断言されているのが、社長と社員しかいない2層構造の組織。中間管理職、つまり社長の下・社員の上を育てることに力を入れるべきだという主張です。

そのためには日々の業務をこなさせるだけでは成り立たない、として、外部研修への参加や、コアタイムを潰してマネジメント業務に充てさせる方法が挙げられています。プレイングマネージャーを本当にこなせる人は非常に少ないので、まずプレイヤーとして完成させ、その後プレイヤーの時間を減らしてマネージャーの仕事をさせる。この「勇気を持って任せる」ことが要だと語られています。

8番目のスキルアップ支援では、工務店に研修文化がないケースが多いと指摘されています。フランチャイズ加盟企業には研修があるものの、それは加盟商品を売るための研修である場合も多い。そうではなく、今の自社に必要な研修を社長自身が探し、マネージャー候補にはマネージャー向けの研修を受けさせる——外に出て足りないものを学べる環境が、定着する理由にもなるという整理です。

12番目の適材適所では、「優秀だからと何でもかんでも任せると、薄く伸びて結果が出ない」という落とし穴が語られます。0→1を考えるのは苦手だが単純作業は非常に得意な社員もいる。そういう人には総務でブログ更新や日々の報告集計を担ってもらうほうが輝く。誰がどの部署なら優秀になれるのかを考えるのが運営側の仕事だ、というのが動画の立場です。

④文化をつくる6つの施策——雰囲気・意見・フィードバック

残りの施策は、日々の空気そのものに関わるものです。

施策 動画で語られた要点
7. 社員同士の交流機会 BBQ・ランチ会など。社長は参加しなくてもよく、社員が企画して動くことが大事
11. 社員の意見を取り入れる 「何も分かってないくせに言うな」は絶対NG。最も危険なのは何も言わない社員。報告ルールやマニュアルは社長ではなく社員につくらせる
13. フィードバックはその場で 会議中でも帰り道でも朝礼中でも即伝える。社員から社長へも同様。最悪なのは飲み会で陰口を言う文化
14. 無理な残業をさせない 残業の常態化は、運営側がキャパを超えて仕事を渡している証拠。品質低下とトラブルに直結する
15. 会社の雰囲気を明るくする 社長・マネージャーが率先して話す、BGMを流すなど。暗いのは「全部あなたのせい」と語られています
16. 新入社員のフォロー徹底 最初の数ヶ月が勝負。OJT担当・教える内容・成功体験までをワンセットで設計。同期同士で催し物をさせる仕組みの例も紹介

そして17番目は経営者自身の成長です。社長の言うことも、やることもずっと同じなら、会社がどこへ向かっているか分からない。そういう会社に人は定着しない——だから社長が外に出て経営者研修を受け、新しいことに挑戦しているかが問われます。

19番目は仕事の意味、つまりビジョンの伝達。ここで動画が突いているのは、頻度の問題です。「年に1回しか言わないと忘れる。半年前に自分が話したことを、あなた自身覚えていないですよね」。覚えていないことを社員に覚えろというのは不可能なので、壁に貼る、デスクトップに表示する、Notionなどで常に見える場所に置く、といった形でほぼ毎日レベルの浸透を考える。3年後・5年後にこの会社はこうなる、あなたはそのクルーの一員だ、と伝え続けることが定着につながると語られています。

最後の20番目は、社員の家族を大切にすること。社員を支えているのはその家族であり、監督を支える配偶者への感謝をどう伝えるかを考えていない社長が多い、という指摘です。家族の誕生日を全員覚えてメッセージや贈り物をする工務店、社員の家族全員を招いて感謝を伝えるイベントを開く会社の例が紹介されています。家族ぐるみで応援される会社をどうつくるか、が最後の論点です。

明日からやること

20個を一度に始めるのは無理があります。動画の趣旨に沿って、着手順に並べると次のようになります。

  1. 評価の棚卸し(今週):職種ごとに「何をどう頑張れば給与が上がるのか」を1枚に書き出す。壁に貼るか、社内ドライブで全員が見られる状態にする
  2. 1on1の質問票をつくる(今週):目標・進捗・課題・チーム状況の4点を固定の質問にし、実施後その日に共有、翌日から打ち手を動かす
  3. 朝礼に宣言と振り返りを入れる(明日から):今日の小さな目標を宣言させ、終業時に結果を聞いて褒める
  4. スキルチェックリストを1職種分つくる(今月):できる・できないが見える形にして、成長を可視化する
  5. キャリアプランを1人分だけ書いてみる(今月):3年後の会社像と、そのときの本人のポジションから逆算して面談で伝える
  6. 陰口をやめ、その場で言う(明日から):社長自身が、思ったことをその場でフィードバックする側に回る

小倉は動画の最後で「社員が定着すると社長も楽になり、会社も楽になって事業も成長していく。1つ1つの施策を軽視せず、やり切ってほしい」とまとめています。

よくある質問

評価制度をつくる余裕がありません。何から手を付ければいいですか

動画では、完璧な人事制度より先に「透明化」が大事だと語られています。まずは営業や現場監督といった分かりやすい職種から、受注・粗利・リードタイム・手戻り回数といった既にある数字を使って、どう頑張れば給与がどう上がるのかを書き出すこと。壁に貼るレベルの簡素なものでも、不透明なまま放置するより効果があるという整理です。

休日を増やせば定着しますか

動画の立場は「意外とそうでもない」です。自分の仕事が中途半端なまま休めと言われても難しいため、休日数そのものを増やすより、月間でこれだけは休んでほしいという最低ラインを権利として渡し、どう休むかは社員に委ねる。その自由度のほうが働きやすさにつながると説明されています。

意見を言ってくる社員への対応に困っています

動画では、意見を言う社員は会社を良くしようと思っているから言うのであり、「何も分かってないくせに」と返すのは絶対にNGだと語られています。本当に危険なのは何も言わない社員のほうで、仕事ができる人ほど黙ってしまう傾向があるという指摘です。意見を一度反映させ、その結果まで一緒に伴走すると、当事者意識と小さな成功体験が同時に生まれる、というのが推奨されている対応です。

まとめ

今回の動画が投げかけているのは、採用力の話ではありません。採用した人が残る会社になっているか、という運営の話です。給与の透明化、目的のある1on1、キャリアの提示、小さな成功の承認、リーダーの育成、適材適所、即時フィードバック、ビジョンの日常的な浸透、そして家族への感謝——20項目はどれも、特別な投資を必要としないものが大半です。自社でやっていない項目に印を付け、1つずつ着手することが、工務店経営における採用コストの最も確実な削減策になります。

続きや実際のやり取りは動画でご覧ください: YouTubeで動画を見る

評価シートの整備や1on1の記録・共有といった社内の手間は、工務店×AIの実務としてAI業務代行『マルオくんAI』(株式会社ウィズモー提携)に丸投げできます。

監修:株式会社ウィズモー(工務店の事業促進・社内改善支援)

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